2025年1月13日(月)に勝田環境グループでゴルフコンペを行いました。

毎年、大学で同じ時期に講義を担当しています。その講義のテーマは、学生に「働く意義」と「学ぶ意味」を伝えることです。
「働く意義」と「学ぶ意味」は人それぞれ異なります。しかし、労働社会学、心理学、哲学といった分野の研究によると、人が働くことで得られる「楽しさ」や「満足感」には、国ごとの歴史や文化、宗教観による違いはあるものの、多くの共通点があることが示されています。
たとえば、労働社会学の研究では、人は単に収入を得るためだけでなく、自己実現や社会とのつながりを求めて働くことが明らかになっています。心理学では、仕事における達成感や承認が人の幸福感に大きな影響を与えることが指摘されています。また、哲学の観点からは、「働くこと」と「生きること」の関係性について、多くの議論がなされてきました。
大学教授は学問的な知見を学生に伝えることが本職ですが、私のような社会人が講義を担当する意義は、実務経験に基づいたストーリーを伝えられる点にあります。私自身の経験を通して、働くことの意味や学ぶことの価値を、より具体的に伝えることができればと考えています。
ここで少し、AIの進化について触れてみたいと思います。
ChatGPTをはじめとするAI技術は、驚くべき速さで進化を遂げています。ほとんどの質問に対し、1~2秒の間に「答え」を提示し、その精度も日々向上しています。こうした進化により、AIが人々の生活や仕事に不可欠な社会インフラとして確立されつつあります。このような時代において、改めて「学ぶ意味とは何か」と自問する人も多いのではないでしょうか。
AIの歴史を振り返ると、その起源は1950年代にまで遡ります。イギリスの数学者アラン・チューリングは「チューリングテスト」を提案し、機械が人間の知性を再現できるかどうかを評価する基準を示しました。これが、AIの基本概念を発展させる道を開いたとされています。
1950年代後半からは、エキスパートシステムや計算解析といった論理的推論をベースとした研究が進みました。これにより、パターン認識技術が発展し、AIの基礎研究が加速しました。1980年代になると、エキスパートシステムの実用化が進み、特定分野における問題解決能力が向上しました。しかし、この時点では処理能力やデータ量の制約があり、AIの活用範囲は限定的でした。
2000年代に入り、インターネットの普及と計算能力の飛躍的向上により、機械学習やディープラーニングが本格的に活用されるようになりました。この技術革新により、画像識別や自然言語処理などの分野で顕著な成果が見られるようになります。そして、2010年代にはディープラーニングがさらに進化し、チャットボットや自動翻訳、音声認識など、実生活に直結するAI技術が登場しました。
2020年代に入ると、AIの進化はさらに加速し、生成AI(Generative AI)が注目を集めるようになります。GPT(Generative Pre-trained Transformer)シリーズをはじめとする大規模言語モデルは、膨大なデータを学習することで、文章の生成や翻訳、質問応答といった高度なタスクをこなせるようになりました。この進化により、AIは特定の領域で人間を超える能力を持つようになり、創造的な作業や意思決定の支援にも活用されるようになっています。かつては専門知識を持つエンジニアしか扱えなかったAI技術も、今では一般の社会人が容易に活用できる時代になりました。
AIが爆発的に進化し続ける現在、「学ぶ意味」はますます多様化し、人によって捉え方が異なるようになっていると感じます。
ちなみに、私自身が考える「学ぶ意味」は、自身の「問題意識」を明確にすることだと言えます。
社会には、解決すべき問題が数多く存在します。そして、それらの問題に取り組むのは、一人ひとりの人間です。しかし、一人の力には限界があります。だからこそ、社会の中で「自分がどうありたいのか」を考え、それを明確にするために、多くの時間を費やし、本から学び、人との議論を通じて「問題意識」を深めていくことが必要だと思います。
仮にAIが、「社会にはこのような問題があり、あなたはこれに取り組むべきです」と「答え」を示してくれたとしても、その課題に心から取り組みたいと思えなければ、実際に行動に移すことは難しいでしょう。社会の「課題」を自分自身の「問題」として認識し、意識を明確にするためにも、人生の多くの時間を費やし、学び続けることが大切なのではないでしょうか。
「学ぶ意味」とは、自分自身の価値観や問題意識を掘り下げ、それを基に行動を起こすための土台を築くことにあるのだと思います。学ぶことで、自分が社会の中で果たすべき役割や、働く意義を見出していけるようになると私は考えています。
私が考える「働く意義」とは、他者と繋がり、社会課題の解決に貢献する中で、自分自身の価値を感じ取ることです。働くことを通じて得られる喜びや満足感は、単なる報酬や成果にとどまりません。それは、他者からの感謝や、自分が社会の一部としての役割を果たしている実感から生まれるものだと思います。「働くこと」は、作業や義務ではなく、私たちの人生に意味をもたらす重要な要素と考えられます。
私が「働く意義」を明確にする上で影響を受けた学びの一つに、社会学者マックス・ウェーバーの著作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』があります。ウェーバーは、プロテスタントの勤勉さ、禁欲的な生活、時間の有効活用といった宗教的価値観が資本主義の発展に大きな影響を与えたことを指摘しました。特に、ウェーバーが論じた「職業召命観(ベルーフ)」は、働く意義を考える上で示唆に富んでいます。
この「職業召命観」とは、仕事を単なる生計手段ではなく、神から与えられた使命と捉える考え方です。つまり、自分の職業を通じて社会に貢献し、その役割を果たすことが、「救いの確かさ」にもつながるという視点です。ウェーバーは、こうした倫理観が資本主義の発展を後押しし、労働を苦役ではなく、社会的・精神的な意味を持つものへと昇華させたと述べています。
このウェーバーの考え方は、現代社会においても働く意義を見つめ直す際のヒントとなります。たとえば、仕事を単なる作業として捉えるのではなく、自分自身や他者、さらには社会全体に価値をもたらす行為であると認識できたとき、働くことに対するモチベーションや満足感は大きく向上するでしょう。
また、近年では「パーパス経営」という概念が注目を集めています。これは、企業が単なる利益追求ではなく、社会的意義を持って経営することで、従業員の働く意欲や企業の持続的成長を促す考え方です。個人においても、仕事の目的や意義を明確にすることは、やりがいを見出し、働く喜びを感じるための重要な要素だと考えられている証左と言えそうです。
私は、就職先に悩む学生や転職を決められない社会人と向き合う中で、「就職・転職」に対して問題意識を抱くようになりました。
求職者にとっての「就職・転職」と、企業側にとっての「求人・採用」のマッチングは、単にスキルや条件が一致するだけでは十分ではなく、これまで企業の基本理念を基にしたストーリーを作り上げ、求職者と企業の橋渡しを行ってきました。
たとえば、AIに「求職者と求人企業をマッチングする方法は?」と尋ねると、おそらく「求人企業がより多くの情報を求職者に提供すべきだ」という答えが返ってくるでしょう。その答えは間違っていませんし、実際、多くの経営者や採用担当者がAIを活用すれば、短時間でそのような「答え」を得ることができます。
しかし、大切なことは「答えを知ること」ではなく、「答えをもとにどのように行動するか」だと思います。AIが示す最適解を受け入れ、実際に課題解決に向けて取り組むかどうかは、最終的に「人」の意志に委ねられます。AIが提供する情報や分析結果を活用することは有効ですが、それをどのように解釈し、具体的な行動につなげるかについても「人」の意志に掛かっています。
AIが進化し、多くの情報が容易に手に入る時代だからこそ、自分自身の問題意識を深め、それに基づいて行動することの重要性が増していると考えます。私が講義で伝えたいのは、「学ぶ意味」を再考し、「働く意義」を「自分なりに」見つけ出すことの大切さです。AIがどれだけ進化しても、自分自身の「問題意識」を明確にし、それに基づいて行動する意志を持つことは、人間にしかできないことだからです。これからも、学生たちが自分自身の価値観に気がつき、自らの意志で行動できるよう、社会人としての経験や考え方を伝え続けていきたいと思います。
【引用・参考文献】
・『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』マックス ヴェーバー (著), 大塚 久雄 (翻訳)(1989)
2024年7月に実施されたイギリス総選挙において、労働党が下院で650議席中411議席を獲得し、2010年から続いていた保守党政権を14年ぶりに終わらせ、政権を取り戻しました。この結果、労働党の党首であるキア・スターマーが新たな首相に就任し、イギリス政治の潮流がまた変わることとなりました。
イギリスは1945年以降、労働党と保守党の2党が交互に政権を担う、いわゆる二大政党制の政治体制が特徴です。この体制のもと、経済政策や社会保障制度の違いを軸に、両党が政権を交代しながら国政を運営してきました。
第二次世界大戦直後には、労働党のクレメント・アトリーが6年間政権を担い、その間に国民保健サービスの創設や社会福祉の拡充を進めました。その後、1951年には保守党のウィンストン・チャーチルが政権を奪還し、保守党政権は以降13年間続きました。この時期には経済の回復と冷戦下での外交政策が重要な課題となりました。
1960年代以降も保守党と労働党による政権交代が何度か起こり、1979年には保守党のマーガレット・サッチャーが首相に就任しました。サッチャー政権は18年間続き、規制緩和や民営化政策を推進し、経済成長を促進しましたが、社会的な格差の拡大という課題も残します。その後、1997年には労働党のトニー・ブレアが政権を奪取し、「第三の道」と称される中道左派的な政策を打ち出し、2007年まで続く長期政権を築きました。
1945年から2024年までの間において、労働党が政権を担った年数は31年であるのに対し、保守党は49年間と、二大政党制においても保守党の政権期間が長いことが分かります。
1979年に新自由主義を掲げて政権の座に就いた保守党のマーガレット・サッチャーは、市場経済を重視し、「小さな政府」を推進しました。サッチャー政権下では社会福祉の縮小、国有企業の民営化、規制緩和が積極的に進められ、英国経済の構造改革が行われました。その後、1990年にジョン・メージャーが首相に就任し、サッチャーの基本方針を継承しながらも、より穏健な政策運営を試みました。しかし、景気の低迷や与党内の分裂などが影響し、1997年の総選挙で保守党は敗北、18年にわたる保守党政権は終わりを迎えました。
労働党が1997年に政権交代を果たした背景には、政策的な要因とともに、党首トニー・ブレアのリーダーシップが大きく影響したと考えられています。労働党は1900年の結党以来掲げてきました社会主義的な政策を大幅に見直し、「第三の道」と呼ばれる新たな路線を打ち出しました。この「第三の道」は、市場の効率性を活用しながらも、社会正義や平等を確保するという方針を基盤としており、過度な政府介入を避けながらも福祉政策を適切に維持するバランスを重視した政策でした。
また、ブレアのカリスマ性や演説の巧みさ、メディア戦略の成功も労働党の勝利に大きく貢献したと言われています。ブレアは若くダイナミックなイメージを持ち、従来の労働党のイデオロギー色を薄めることで、広く国民の支持を獲得しました。
リーダーの個人的な魅力やイメージを前面に押し出し、国民の支持を獲得して選挙に勝利し、重要政策を推進する手法は「政治の人格化」と呼ばれています。この手法は、特定のリーダーのカリスマ性やコミュニケーション能力を活かし、政策そのものよりも人物像を重視する傾向が強いのが特徴です。この「政治の人格化」の代表的な例として、トニー・ブレアが挙げられます。ブレアのスタイルは「クール・ブリタニア」とも呼ばれ、当時のイギリス社会に新たな政治の風を吹き込むものとして評価されました。
イギリスではこの手法がいち早く発展し、メディアの影響力を活用してリーダーの個性を前面に出す政治手法が確立されました。日本においても、この「政治の人格化」は2000年代以降、より顕著に見られるようになります。その代表例が2005年の衆議院選挙における小泉純一郎元首相の「郵政選挙」と言えるでしょう。小泉氏は「自民党をぶっ壊す」という強いキャッチフレーズを掲げ、郵政民営化を争点化し、劇場型の政治スタイルで圧倒的な支持を集めました。この選挙は、日本において「政治の人格化」が本格的に定着した象徴的なケースとされています。
現代の政治において、リーダーの個人的な魅力を活用する「政治の人格化」は、選挙戦略の重要な要素となっています。特にカリスマ性を持つリーダーをマーケティング手法によって「売り込む」ことは、支持を獲得するうえで欠かせなくなっています。このプロセスでは、リーダーのイメージを巧みに管理するスピンドクターや、選挙キャンペーンを支えるメディア・コンサルタントが極めて重要な役割を果たします。
1997年のイギリス総選挙では、労働党が勝利を収めました。この勝利の背景には、党首トニー・ブレアのカリスマ性を最大限に引き出すための戦略的なイメージ管理がありました。ブレアの発信するメッセージは、短時間で国民に伝わるように工夫された「サウンドバイト(短く印象的なフレーズ)」を活用し、PRのプロフェッショナルたちによって綿密に計画された選挙キャンペーンが展開されたと言われています。
このように、選挙戦においては、政策の詳細よりもリーダーの個人的魅力を明確に国民へ伝えることが重視されるようになっています。その背景には、1945年以降の福祉国家政策の進展もあります。特にイギリスでは、保守党と労働党の間でかつては明確だった政策上の対立が次第に希薄化し、医療・教育・社会保障といった主要政策が政権交代によっても大きく変わらなくなっていきます。1990年代以降、この傾向はさらに強まり、政党間の政策の違いが目立たなくなるにつれて、国民の関心は「政策」よりも「リーダーの個性や魅力」に移行していきます。
政治家は政策を打ち出すだけでなく、カリスマ的リーダー像の構築が、勝敗を左右する大きなな要因となっているのです。
この傾向は、日本の政治においても顕著に見られています。かつては自民党と野党との間で政策面の対立が明確でしたが、現在では政党間の政策の違いが希薄化しつつあります。その結果、選挙戦においては、各政党のトップ・リーダーの個人的魅力が重要な役割を果たすようになっており、特にメディアを活用したイメージ戦略や、SNSを駆使した直接的な発信がリーダーの支持率に大きく影響を与えています。
最後に、「政治の人格化」が採用活動にどのような示唆を与えるのかを考えてみたいと思います。
「政治の人格化」とは、リーダー個人の魅力やカリスマ性が重視され、政策よりも人物の印象が選挙結果に大きな影響を与える現象を指します。この背景には、戦後の福祉国家政策の成功があります。具体的には、経済発展により、かつて保守党の支持基盤であった経営者、資産家、農民と、労働党の支持基盤であった労働者や労働組合との間で、明確な利害対立が顕在化しにくくなったことが挙げられます。政党間の政策的な対立軸が曖昧になると、有権者は「どの政党の政策を支持するか」よりも、「どの政党のリーダーを信頼できるか」に関心を移していきます。その結果、カリスマ性を持つリーダーがメディアを通じて国民に強い印象を与えることが、選挙においてより重要になってきたのです。
日本では、2008年の総人口1億2808万人をピークに、人口減少が続いています。総務省の推計によると、2023年の総人口は1億2433万人となり、この15年間で375万人の減少が見られています。この数値は、茨城県(約280万人)と秋田県(約90万人)を足した人口規模に相当し、減少の深刻さがうかがえます。さらに、少子化の影響は顕著で、15歳未満の人口は総人口の11.4%にまで縮小しました。かつては社会の中心的存在であった若年層が「マイノリティ化」しており、今後の深刻な労働力不足や社会構造の変化が強く懸念されています。
こうした人口減少社会において、企業は将来の基幹社員を確保するため、初任給の引き上げや福利厚生の充実、柔軟な働き方の導入など、さまざまな施策を講じています。しかし、企業間の採用競争が激化する中で、給与や待遇を向上させるだけでは求職者の関心を引きつけるのは難しくなって来ていると言えます。
給与や待遇だけでは求職者の関心を引きつけるのは難しくなっている現在、「政治の人格化」に見られるカリスマ的リーダーと専門家の活躍は、採用活動においても参考になる可能性があります。
「政治の人格化」とは、リーダー個人のカリスマ性や魅力が国民の支持を得る大きな要因となる現象のことでした。ブレアの個人的魅力を最大限に引き出すために、スピンドクター(政治戦略の専門家)やメディア・コンサルタントが計画的にイメージを管理し、またビジュアルやストーリーを駆使し、感情的な共感を呼び起こす戦略も採られました。このような手法は、企業が求職者の関心を引きつけ、競争の激しい採用市場で成功するための示唆を与えてくれます。
企業の採用活動においては、特に、イメージ戦略やコミュニケーション戦略に精通した採用の専門家が果たす役割はとても大きくなっていると言えます。企業のブランド価値を高めるために、SNSや動画プラットフォームを活用し、求職者に向けた効果的なメッセージを発信することの意味は年々高まっています。また、ストーリーテリングの専門家の存在も重要と考えます。企業が持つ独自の歴史や背景、事業を通じた社会貢献、さらには職場環境の実情を具体的に示すことで、求職者に企業文化の「らしさ」や「誠実さ」を伝えることができます。
さらに、経営者・リーダーを支える専門的な支援体制の整備も大切です。採用活動においては、経営者・リーダーと共に人事部門や従業員が一体となり、企業の魅力を戦略的に発信する必要がありそうです。こうした取り組みが、給与や処遇面だけではない他社との違いについて求職者に認識させることに繋がると言えそうです。
【引用・参考文献】
・『ブレア時代のイギリス』山口二郎(2005)
2024年11月15日(金)に高知県立県民文化ホールにて電話応対コンクール全国大会が開催され、弊社から茨城県代表で1名が出場しました。
コンクールの様子やインタビューがNHK高知放送局で放映されました。
